記事抜粋
毎年50万人を超える市民が集まるパリのプライドパレード
(正式名称は「レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのためのプライドの行進」)
のスタート地点には、開始の1時間ほど前から色とりどりに着飾った人々が集まり、
モンパルナスタワー眼下にある広場の路上はいっぱいになった。
地方議会の1議員に過ぎないロメロさんが、全国的に名前が知られるようになったのは、
彼がゲイであることを、あるミニコミが報じたからである。
しかし、衝撃的だったのは彼がゲイである……という理由だけではない。
ロメロさんは同時にHIVに感染しており、長く生活を共にした恋人をエイズで失っていたのだ。
パレードが始まってから3時間ほどたったころであろうか、すべての音楽、行進がとまり、それまでの喧噪とは対照的な静寂があたりを包んだ。
参加者は下を向き、目を閉じ、黙り込んでいる。それはこれまでに亡くなったエイズの犠牲者を追悼するための黙祷であった。わたしはそのとき、パレードの後列の方にいた。先頭からは5キロメートル以上は離れている。
パレードが始まってから3時間ほどたったころであろうか、静寂があたりを包んだ。
黙祷に似つかわしい雰囲気の中で、死者に思いを馳せ悼む。
と、突然、黙祷しているロメロさんの姿が、まるで実際に見えたかのように浮かんだ。
ロメロさんが俯(うつむ)き、胸中で亡くなった恋人に報告をしている様が見えたのだ。
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